設定している、
たった一人の人の為だけの着信音。

鳴らなくなって、何日経った?






鳴らない  電話






今日も携帯は未承諾広告だの、友達からのメールだの、待っている音楽とは別の着信音を奏でている。
いい加減、鬱陶しくなって来る。いっそ携帯の電源を落としてしまえばいいとまで思うのに、それが出来ないのは自分が待っている証拠だ。さっさと諦めてしまえばいいのに、諦めが悪いというか、依存してしまっているというか。
期待するからしんどいのだという事をわかっているのに、どうしてこんなにも待っているのだろう。どうして諦めないのだろう。自分に何度聞いても、その答えはなく―――泣きたくなる。


約束の日から、二週間。
最後に連絡があったのは、その二日前。
電話に限っては、もう一ヶ月ほど経つはずだ。


連絡は、ない。


約束したのに。
必ず「あの日」に連絡を入れると。何があってもその日だけは覚えているから、と。なのに、一通のメールも、一秒の電話もなかった。あれからもう二週間も経つのに、やはり連絡はない。我慢しきれなくて何度かメールを入れた。彼からの返事は、なかった。
何で、と問うても、誰も答えてはくれない。「連絡がない」。それだけが、答え。


もう自分なんて要らない。
そういう事なのだろうか。


好きだという言葉も。
愛しているという言葉も。
ずっと一緒にいようという言葉も。
何もかも、全てが嘘で。所詮は自分が期待している言葉を、感情もなく放たれただけの言葉で。それを受け取って喜んでいる自分を、彼は心の中で嘲笑っていたのだろうか。そう思うと、胸を締め付けられそうな痛みが走る。


―――いつまで待っているつもりなのだろう。


彼からの連絡を。もうかかってこないのであろう彼からの。
どうして諦めないのだろう。どうして愛想を尽かしてしまえないのだろう。どうしてそんなにも―――依存してしまうくらい、愛しているのだろうか。彼のことを。


約束の日を忘れて、連絡もしてこない、彼のことを。


やってられない。自分が馬鹿馬鹿しくて笑いがこみ上げてくる。笑いと一緒に、涙もこみ上げて来る。どうしろって言うんだ。
自分から電話をするのは怖かった。彼からキッパリ事実を突きつけられるのが怖かった。だから、電話は出来ない。返事が返ってこないことを知っているから、いつの間にかメールすら出来なくなった。
ただずっと、彼からの連絡を待っている。そうする事しか、出来なかった。連絡があったとしても、それは別れを告げる連絡かもしれないのに。それでも、待っていることしか出来なかった。



今日も、指定の着信音は鳴らない。



代わりに鳴るのは未承諾広告のメールだの、友達からの遊びの誘いのメールだの。
そんなメールはいらない。待っているのはただ一通のメール。彼からのメール。ただそれだけなのに、電話はしていの着信音を鳴らしてはくれない。それだけしか望んでいないのに、どうして。
会いたいなんて我儘はな言わない。だから、せめて。せめて、メールくらい届けてくれればいいのに。そんな文句を呟いたって、誰も聞いてくれない。本人に伝えなければ意味のない言葉だけれど、その言葉を彼に伝える勇気すらもう持てなかった。


今何処で何をしているの。


元気にしているの。


誰と、いるの。


聞きたいとは山ほどあるのに、そのどれもが言葉にはならない。どこにも吐き出される事なく、心の中に蓄積していく。蓄積し過ぎて、心が重くて仕方ない。
けれど吐き出すところは、どこにもない。


今日も、指定の着信音は鳴らない。


待ち続けることしか、出来ない。



































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